吹田慈姑 -すいたくわい-
吹田市で江戸時代以前から自生していたもの。現在流通している大型の中国クワイとは異なる小型のクワイで、えぐ味が少なく、栗のようなほくほくした甘さがある。
栗のように甘く、ほっくりしていて、後口に残るわずかな苦味がうま味として感じられる吹田慈姑。
美食家として知られた蜀山人(太田南畝)が狂歌の中で大坂の味の思いでとして「思い出る 鱧の骨きりすり流し吹田くわいに天王寺蕪」という歌を残しているほどですから、そうとうに印象深い味であったことが窺えます。
吹田慈姑の料理ですが、お正月料理の煮しめはもちろんですが、それ以外にも蒸したり、茹でたり、揚げたりといろんな料理に使える魅力を持っています。

吹田慈姑は半野生ですが、嫌なアクといったものはありません。ですから皮を剥いて水で洗うだけで使えます。最初は水が白く濁りますが、数回水をかえるだけでアク抜きは不要。むしろ吹田慈姑ならではの程良いアクを味として楽しむことが料理の秘訣なのではないでしょうか。

「吹田慈姑の煮しめ」
○吹田慈姑・・・・200g 
○だし汁・・・・・カップ1杯半
○淡口醤油・・・・大さじ4
○砂糖・・・・・・大さじ5
○みりん・・・・・大さじ3
※くわいの芽は切り落とさない。
「吹田慈姑の空揚げ2品」
○クワイは包丁で皮をむき、姿のままでサラダ油で揚げ塩で召し上がっていただけます。
○クワイの皮をむかないで、片栗粉をつけて揚げると何もつけずそのまま食べられるほどに甘くなります。
「吹田慈姑のせんべい」
○クワイの皮をむき、芽をとり、薄くスライスしてカラッと揚げます。吹田慈姑は全体に小ぶりなものが多いので大きめの吹田慈姑に適した料理法といえるでしょう。
勝間南瓜 -こつまなんきん-
大阪市西成区玉出町(旧勝間村)が発祥の地。900g弱と小型で縦溝と瘤のある粘質の日本かぼちゃ。果皮は濃緑色だが、熟すと赤茶色になる。
勝間南瓜は和南瓜の中でも比較的小ぶりですが、肉質がしまっていて程良い甘味もあるのが特長です。西洋南瓜のようなホクホクした感じこそありませんが、反対に大阪人好みの味付けがしやすい南瓜だと言えるでしょう。
そのため主に煮物に使われることが多く、また程良い甘味を利用して、羊羹(ようかん)やプリンなどのお菓子などの原料ちしても使いたい南瓜です。

和食店では勝間南瓜特有の上品な甘みが淡口醤油とよく合うことから煮物料理に、また西洋料理店では、小型という形を活かして、勝間南瓜そのものを器に見立てた料理法などが人気を呼んでいるようです。
南瓜は大阪人好みの全く無駄のない野菜です。皮から種まですべて食べられるだけでなく、すべてに栄養価が高いのも特長。
特にビタミンAを筆頭に様々なビタミンと合わせてカロチンも多く、食物繊維もたっぷりで「芋・蛸・南瓜(なんきん)」と言うように大阪の女性に愛されてきたのもうなづけます。

勝間南瓜と合鴨の治部煮
<作り方>
①勝間南瓜を木の葉形に切り、ダシ、味醂、薄口醤油で煮ておきます。
②鴨肉は一口大のそ切りにし、酒をふります。
③鴨肉に片栗粉をまぶします。
④南瓜の煮汁に少したまり醤油を入れ鴨を煮ます。
⑤鴨肉に火が通れば、鴨と南瓜を盛り合わせ、最後に山葵を天に盛り付けます。
芽紫蘇 -めじそ-
明治時代初期、大阪市北区源八付近で栽培がさかんであったため、芽紫蘇等の芽ものが「源八もの」と呼ばれるようになった。青芽と赤芽があり、独特の香気と色合いをもつ。
泉州黄玉葱 -せんしゅうきたまねぎ-
泉州地区で明治時代に選抜された黄色玉ねぎ。代表的な品種は、今井早生や貝塚極早生がある。肉質はみずみずしく柔らかく、甘みが強い。早生のものほど、球形が扁平となる。
現在、泉州黄玉葱の種子は大阪の数件の種苗店により守られています。しかし泉州黄玉葱の栽培は極めて少なく味わうことがかなり難しいのが現状です。僅かながら泉州黄玉葱から生まれた今井早生と貝塚極早生玉葱は、ここ数年泉州の数件の篤農家によって栽培が続けられています。

大正13年頃から育成されたと言われる貝塚極早生は、別名「刺身玉葱」とも呼ばれるほどに独特な甘味を持つ玉葱で、サラダで食べるという現在の食生活に非常にマッチしていると言えるでしょう。 また今井早生も非常に味わい深い玉葱で、昔の玉葱の味わいに慣れた熟年層に今後求められそうな魅力を持っています。
玉葱は極めて栄養価の高い野菜です。それは玉葱の刺激臭ともなっている硫化アリルが多量に含まれているからです。この硫化アリルには胃液の分泌を活発にして食欲を促進させる働きがあります。 また「血液サラサラにする」効果もあり、血栓ができるのを抑制したり脳梗塞や動脈硬化などの予防に効果があると言われています。

その他ビフィズス菌を増やして便秘を予防したり、糖尿病にも効果があるともされています。いわば理想的な健康食品あるといえるのです。
でも最近は包丁で切って思わず涙が出てしまうタマネギなんてお目にかからなくなりました。昔ながらの、美味しくて涙も出てしまう泉州黄玉葱や今井早生や貝塚早生を簡単にスーパーで購入できる日が来ることを期待したいものです。
金時人参 -きんときにんじん-
江戸時代から昭和初期にかけて大阪市浪速区付近の特産であり、「大阪人参」と呼ばれていた。根身は約30cmで深紅色、肉質は柔軟で甘味と香気が強い。
他の人参にはない甘味と香気。見た目にも美しい深紅色の肌。そんな金時人参は大阪のおせち料理にはなくてはならないものでした。
特に冬の煮しめ料理ではスターのような存在であるといっても過言ではないでしょう。文政11年(1828)に刊行された「大坂繁花風土記全」には名産として「難波にんじん」が記されており「京都をはじめ他所でも(人参は)作られているが、味わい色合いともに(難波にんじんに比べ)大いに劣っている」という内容のことが書かれているようです。

金時人参の栄養価ですが、独特の鮮やかな濃紅色はリコピンという色素です。このリコピンには強い抗酸化作用があることが認められています。
さらに人参にはベータカロチンが多く含まれているため、健康食としてとても注目されています。免疫力をたかめる効果がある他、糖質、繊維質、ビタミンC、カルシウムなども豊富に含まれている、いわば緑黄色野菜の代表野菜の代表野菜と言えます。

金時人参と田辺大根の紅白なます
<作り方>
①田辺大根を薄く輪切りにします。
②金時人参の皮を剥き千切りにします。
③ボールに大根と人参を入れ、塩を小さじ1ほど振りかけ、しんなりしたら水気を切ります。
④器に大根、人参、を重ね甘酢をかけます。蓋をして冷蔵庫で保存できます。