毛馬胡瓜 -けまきゅうり-
大阪市都島区毛馬町が起源とされる黒いぼきゅうり。
果長が約30cm、太さ約3cmで、果頂部よりの3分の2は淡緑白色からやや黄色気味となる。
果肉は歯切れよく、肩部には独特の苦みがある。
毛馬胡瓜の味わいの最大の特長は、パリッとした清々しい食感と、果肉のほのかな甘味でしょう。
肩部には独特な苦味がありますが、これが胡瓜らしさであり魅力であるとも言えるのではないでしょうか。
昭和の初め頃までは、大阪の胡瓜と言えば毛馬胡瓜をさしていたようで、その頃から大阪の夏の惣菜料理に取り入れられてきました。
中でも大阪惣菜の傑作とされるのが「鱧皮と毛馬胡瓜のざくざく料理」です。夏に蒲鉾店に並ぶ鱧皮と、毛馬胡瓜を合わせ三杯酢で和えたものですが、口の中でざくざく鳴る食感と、爽やかな酢の味わいは格別なものです。
こうした料理も毛馬胡瓜があってこその料理だと言えそうです。
毛馬胡瓜は大阪の食材との相性もよく、蛸はもちろん鱧やトビアラ(エビ)によくマッチする他、鳥のささ身とも相性がいいとされています。もちろん昔のように漬けものにしても真価を発揮します。中でも粕漬けにした毛馬胡瓜は大阪の名物ともなっていたほどです。
量販店で売られている胡瓜にはない毛馬胡瓜ならではの歯触りを活かすための料理法を考案するお店も増えてきて、最近では和食だけでなくフレンチやイタリアンそして中華店などでもメニューに取り入れられています。昨年は一部の寿司店においてもメニュー化され、「毛馬胡瓜のカッパ巻き」が登場。これまでにない食感のある巻き寿司が大評判となりました。
毛馬胡瓜は、もろきゅうなどのシンプルな料理法をはじめ、イワシとの味噌煮も美味。盛期を過ぎ大きくなった毛馬胡瓜を煮物に使うと、また違った味わいがあるようです。
天王寺蕪 -てんのうじかぶら-
大阪市天王寺付近が発祥で、切葉と丸葉の2系統がある。
いずれも根身は純白扁平で甘みが強く、肉質が緻密である。
蕪が地面から浮き上がったように成長することから「浮き蕪」とも呼ばれていた。
天王寺蕪の味わいの特長は他の蕪にはない甘さと緻密な肉質だとされています。特に甘さにおいては量販店で販売されている蕪の約1.5倍の糖度があることが分かっています。
甘みが強くて柿のように緻密な肉質であることから天王寺周辺の寺社では、天王寺蕪を風呂吹きにして食べる習慣があったようです。
天王寺蕪には丸葉と切葉の2系統がありますが、蕪が大きく成長する丸葉天王寺蕪は主に「干蕪(ほしかぶら)」されていたようです。
干蕪にされたものは汁物の具として多く利用されていたのではないかと思われます。
また切葉の天王寺蕪は粕漬にされ「浪華漬」の名称で大阪土産となっていました。浪華漬けには天王寺蕪の他、毛馬胡瓜や瓜や守口大根などもあったようで、それぞれお店ごとに得意とする食材があったことが浪速名物を記した文献に見ることができます。
茎葉が野沢菜になったように、天王寺蕪は浅漬けにしても大変美味であります。市内の漬物店数件で既に販売も始まっています。天王寺蕪の浅漬けは平成十三年に大阪府のEマーク認証となっています。
天王寺蕪は漬物だけでなく独特な甘みと食感から生食用の野菜としても多く利用されはじめています。
★天王寺蕪の鶏スープ煮★
<作り方>
①天王寺蕪は皮をむいて縦半分に切ります。
②葉は適当な長さに切って塩茹でします。
③鶏もも肉は一口大に切り、フライパンにで油を熱し、皮に焼き色をつけ熱湯に通して脂抜きをします。
④鍋に蕪、鶏肉、煮汁のダシ汁、酒を入れ火にかけ、沸騰したら弱火にしてアクをとりながら火をとおします。
⑤器に蕪と鶏肉を盛り、蕪の葉を添えて煮汁をそそぎ、好みで胡椒をちらします。
三島独活 -みしまうど-
茨木市を中心に三島地域で江戸時代から栽培されている。
独特な促成軟化技術で純白で太く大きく、香り高く柔らかな食感のものが生産されている。
三島の独活が他産のものと違って、気高く純白であるのは、厳寒期に自然を利用した栽培方法を貫いているからに他なりません。
淡白な味わいの独活ですが、栄養価は意外と高く糖質を主体に、若芽には炭水化物・ミネラル・タンニン・精油・酵素・ビタミンB2・Cなどが含まれています。
香りと食感を愉しみたいウドですので、あまり料理も手を加えずにお造り感覚かサラダ風に味わってみるのがいいのではないでしょうか。
★三島独活の梅肉醤油★
<作り方>
①ウドは皮を剥いて短冊などに切り、酢水につけてアク抜きをします。
②梅肉を刻み、醤油(適量)と味醂(適量)で合わせ梅肉醤油を作ります。
③好みでポン酢醤油で食しても美味です。
三島独活を使った和え物料理
三島独活は和え物によくマッチした野菜でもあります。簡単に召し上がるには
●ドレッシング和え
●マヨネーズ和え
●味噌和え
●辛子酢味噌和え
などの料理法が好まれているようです。
これら和え物の他にも、独活を短冊切りにして天麩羅で食したり、独活を中華風に炒め物として活用するのもいいでしょう。
また椀物の具として使えば、上品で何とも春らしい一品になるのではないでしょうか。
玉造黒門越瓜 -たまつくりくろもんしろうり-
大阪城の玉造門(黒門)付近が発祥地。果長約30cm、太さ約10cmの長円筒型。
色は濃緑色で、8~9条の白色の鮮明な縦縞がある。太さが6~7cmの細い系統もある。
大阪が生んだ狂歌師である鯛屋貞柳(1734没)が次ぎの一首をとどめています。
「黒門といえども色はあおによし奈良漬けにして味をしろうり」 糟漬にした玉造黒門越瓜がいかに美味であったかを詠ったものです。
このように名産と賞賛されたシロウリですが当時の食され方は糟漬、醤油漬け、乾し瓜などが主流であったようです。
ちなみに資料によりますと乾し瓜とは、「新瓜を縦八っつに切りさき、なかご取り去り塩をまぶし、暑熱の上に晒し乾かす。6、7日してよく乾いたものを磁器に収納する。用いるときは塩すなを洗い去り切片を酒に浸して食す」とあります。
冷蔵庫もない昔の夏の暑い時期では、いかに早く加工するかがシロウリの調理法の基本であったことが伺えますが、現在では意外と生食用の食材として利用されはじめています。
例えば塩茹でしたシロウリにサラダドレッシングをかけたり、夏時期の椀だねにシロウリを使うというのも案外手軽で人気のようです。
玉造黒門越瓜そのものを器に見立てた料理も夏らしさを演出するのに昔から使われていたようで、昭和初期の料理書には、「印籠づくり」という名前で紹介されています。
これはシロウリの皮をところどころに残してそ剥き、中の種を取り去り塩水に浸け、しなやかになったところで水気を取り甘酢につけます。
中にむき海老や茗荷やトマトなど夏の食材を詰めたものです。
印籠とは武士が腰につけたもので、その中には病の妙薬が入っていました。
これに因んでつけられた、食べる夏の妙薬といったところでしょう。
田辺大根 -たなべだいこん-
大阪市東住吉区の田辺地区の特産であった白首大根。
根身は白色の円筒型で、末端が少し膨大して丸みを帯び、葉には毛じがない。
肉質は緻密、柔軟で甘味に富む。
田辺大根ほど風呂ふきに適した大根はないと言われています。その理由は肉質が緻密であること、煮くずれしないこと、生食で感じられる辛みが炊くことで消え、甘味に変わることなどがあげられます。
なんでも昔は、太り始める前の小さな田辺大根を大根おろしにし、蕎麦の辛みとして使っていたそうです。
蕎麦処でしられた大坂の蕎麦屋では薬味として田辺大根のおろしが添えられていたのではないでしょうか。
風呂ふき以外にも、おでんやせんば汁、たくあん、なますなどにも使われていたようです。青首大根と違ってスマートではなく、どちらかといえばずんぐりとしていて形も不揃いですが、大根本来の味わいや魅力をしっかりと内に秘めた大根だといえるでしょう。
「大根煮」
○油揚げと炊く・鰤(ぶり)と大根を薄切りにして鰤といしょうに魚すき風・魚の煮汁と炊きます。
「田辺大根のおでん」
○縦横同じ厚みで炊きます、肉質が緻密なことから中まで味がしみ込まないので大根の味わいを楽しめます。
「船場汁」
○大阪の郷土料理のひとつ船場汁にかかせないのが田辺大根。塩鯖のアラの水煮に田辺大根の短冊切りを入れます。
「大根飯」
○田辺大根の葉には大根特有の毛がありませんので葉も美味しく食べることができます。塩もみした大根葉そして大根はもちろん人参や、干し椎茸を刻み入れて、かやく御飯のように食してください。
田辺大根の発祥の地である東住吉区では普及の面において「田辺大根をふやしたろう会」が田辺寄席などを通じて田辺大根の普及に努めている他、不動尊法楽時では終い不動の日に田辺横門大根のだいこ炊きを行っています。
また地域のボランティアグループや東住吉区保健栄養推進協議会の人達が、田辺大根の魅力を料理から見つめ直そうと葉茎まで無駄なく美味しく食べられる田辺大根料理の考案と普及につとめています。
またこうした動きをうけて、地域の飲食店も田辺大根を使った洋風創作料理をメニューに加えるなど様々な取り組みが行われています。